導入事例
JT加工食品グループでは『テーブルマーク』『富士食品工業』『ケイエス冷凍食品』の3社の品質情報管理システムを、MerQuriusにより統合します。
JFEシステムズは私たちの『業務標準化パートナー』です。
テーブルマーク株式会社 品質保証部 部長 西岡 亨 氏(写真左)、同部 長谷川 達也 氏(写真右)に、MerQuriusを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。
テーブルマーク株式会社はJTグループに所属し、冷凍食品、パックごはんなどを製造、販売する加工食品企業です。特に冷凍めん、冷凍お好み焼では、それぞれシェア約40%、約70%で国内首位。近年は植物由来の原材料を活かし、からだの状態や価値観の違いを問わず、すべての人にとって快適でおいしい食品の提供を目指したブランド「BEYOND FREE(ビヨンドフリー)」も展開しています。「食事をうれしく、食卓をたのしく。」をパーパスに掲げ、国内に自社工場5拠点、グループ会社9社を有しています。
年商1303億円、従業員数3325名(連結)。
テーブルマークではMerQuriusシリーズを20年来、品質情報管理の基幹システムとして使い続けています。まず2 0 0 4 年にMercriusを導入し、最初は商品情報の管理からはじめ、その後、原料情報管理(トレーサビリティ)、包材情報管理、工場の品質管理体制の情報管理、問い合わせ・インシデント情報管理、品質検査部門で実施している検査情報の管理へと用途を拡大しました。さらに2011年には、商品の表示情報を正確、効率的に作成、管理するためにQuebelを導入、2014年にはサプライヤからの原料規格書を標準化するべくMerQurius Net 原料規格書サービス、顧客に提出するカルテ業務の自動化・効率化をするべくカルテビューを導入しました。
一連のシステム導入はすべて「品質保証体制の強化」を目的とするものです。テーブルマーク社内でこれらシステムは一括して「食の安全・安心システム」と呼んでいます。
そして今回、JTグループの加工食品3社であるテーブルマーク、富士食品工業株式会社、ケイエス冷凍食品株式会社が共同してシステム統合プロジェクト「PJ-CLOVER(プロジェクト・クローバー)」を立ち上げ、3社の品質管理システムを一つのMerQuriusに統一する作業を進めているところです。
【システム概要図】
「MerQuriusは品質情報管理の基幹システムです」
西岡 亨 氏
先ほどテーブルマークでのMerQurius導入状況を述べましたが、実はJTグループ内では富士食品工業、ケイエス冷凍食品の2社も、独自にMercriusやQuebelを導入していました。
今回の「PJ-CLOVER」により、3社に個別導入されていたMerQurius3セットを、一つに統合していきます。
システム統合の目的は、食の安全情報をJTグループの加工食品事業3社で統一管理し、グループ全体におけるシナジー効果を創出することです。
この目的を実現するため今回は特に「標準化」に重点を置いています。
具体的には、3社でデータ構成、業務フローが異なっている状態(=As Is)から、標準のデータ構成、標準の業務フローに統一していきます(=To Be)。各社が独自構築した個別機能(アドオン)については、要否を全体で検討し、標準機能への置き換えや、標準機能を損なわないよう移行、再構築します。今回のシステム統合により将来、法令変更やDX化など環境変化が生じた際も、MerQuriusの最新機能をただちに取り入れることで、迅速に、低費用で対応できます。
【統合イメージ図】
この他、システム統合の意義、背景を、キーワードを用いて説明すると次のようになります。
1.「蓄積されたひずみの解消。持続可能なシステムへ」
2.「3社の業務フローのあるべき姿をどう考えるか」
3.「標準テンプレートの実用性」
4.「複数の異なる現象。背後に一つの問題」
5.「意外に重要。ことばのちがいの解消」
6.「コスト削減(特に保守)」
3社のMerQurius導入の目的はそれぞれ異なっていました。テーブルマークでは「全社的な食の安全・安心の管理」、富士食品工業では「開発部門での配合(レシピ)の管理をメインとした独自の検索システムの置き換え」、ケイエス冷凍食品では「商品開発・品質保証業務の効率化」が導入目的でした。
そして3社は、それぞれの現業部門が自社独自の業務フローに基づき、MerQuriusに対し独自の使い方、独自の機能拡張を重ねてきました。
それはいつしかその部門に長くいる社員にしかわからない機能となり、その社員が定年などで退職した場合、管理、改修が困難になっていました。いわゆる「業務のガラパゴス化」です。
各部門がよかれと思い改修をつづけた結果、それは標準化を遠く離れた「ひずみ」となり、そのひずみは年を追うごとに蓄積、拡大されました。
近年、食品の法令が変わり、流通企業や一般顧客が求める食の安全・安心への期待も高まるなど、外部環境が変化する中、いつまでもガラパゴスにとどまっていては、やがてシステムも業務も「持続不可能」になります。
今回のMerQurius統合を機に、これらの「ひずみ」をリセットし、すべてのシステム、業務フローを「標準化」「脱・属人化」し、JTグループ加工食品事業の成長を担保していく、そのように構想しています。
3社の業務フローを「標準化」する。美しい理想論ですが、実現は容易ではありません。そもそも何を「標準」と見なすのか。3社とも自社の業務フローには自信と必然性があります。それを考慮せずに、いずれか1社の手法に片寄せするのは、紛糾を招きます。かといって従来手法に固執したのでは標準化にならない。
そもそも3社は同じ加工食品でも業態がちがいます。テーブルマークは冷凍めん・お好み焼きなどの冷凍食品と常温のパックごはん、富士食品工業は酵母エキスなどの調味料事業、ケイエス冷凍食品はミートボールなどの冷凍食品。商品カテゴリー、生産工程の違いだけでなく、商品の開発~上市といった業務フローもそれぞれ異なるので、これを一つに「標準化」するのは容易でありません。
では今回どうしたかというと、結論として「JFEシステムズが提供する標準化テンプレート」をあるべき姿と置くことにしました。つまりシステム側に業務を合わせるわけです。このように外部の標準に合わせれば、どこか1社に片寄せして揉めることはありません。
とはいえ通常、システム会社が提供する標準テンプレートには、「こぎれいなだけで現場では使えない」「帯に短し、襷に長し。中途半端」という印象がある。正直、私たちも最初はそう思っていました。しかしMerQuriusの標準テンプレートを試しに使うと、驚くほど我々の業務を広くかつ合理的にカバーしていました。これは驚きでした。
それについてJFEシステムズに尋ねたところ、次のような説明がありました。
「MerQuriusも最初から標準志向だったわけではない。最初はむしろ『パッケージとスクラッチの中間、セミオーダーシステム』を売りにして『業務へのフィット感を最優先』『システムを業務に合わせます』という方針だった。しかしこのやり方では新規導入の度に膨大な時間、手間、費用がかかる。
これを脱するべく、ある時期からテンプレートを拡充していった。大手企業への導入がある程度、一巡したところで、各社の手法を参考に『標準的な業務の進め方』をテンプレート化し、これを新規顧客に提案していった。正直、当初は導入の早期化が主な目的だった。
ところがこのテンプレートは、導入早期化に加え『業務の標準化』という点でも顧客価値があった。品質保証や情報管理は食品メーカーにとって核心的な競争分野ではない。これを高水準で標準化することは食品業界全体のためになると分かった。
その後JFEシステムズでは、サプライヤからの原料規格書を統一書式でネット提出、管理するという構想を提唱し、それをMerQuirus Net 原料規格書サービスとして製品化した。これに限らず現在は『MerQuirusで業務を標準化する、脱・属人化する』という方向に舵を切り、今に至っている。」
このような趣旨の説明でした。
JFEシステムズの「標準化」志向は、JTグループが目指す方向に合致しています。また大手食品企業の手法が「標準化テンプレート」として集大成されていることも、テンプレートの内容が優れている理由として、よく納得できました。
かつて、流通からの問い合わせを通して複数の箇所で察知した異常について、初期段階ではそれぞれの部署が独自に対応を行っていたのですが、調査を進めるうちに、別々に対応していた事象が実は同じ要因で繋がっていたということがありました。つまり、拡散性のある大きな問題を小さな事と捉えてしまうリスクが存在していたのです。
先にお話ししました、テーブルマークにおけるMerQuriusの拡大改作(原料、包材、問合、検査ビューの追加)は、この課題に対しての食の安全管理強化策として実現したもので、現在も問合ビューを中心とした迅速でシステマティックなご指摘対応を行っています。今回のシステム統合において、テーブルマークでのご指摘対応の業務フローをより標準化した形で再構築することにより、今後は3社それぞれが独自に異常事象をつかんだ場合でも、共通の業務フローで共有のデータベースにアクセスして検索することになる。これにより背後にある大事象を初動段階で迅速、確実に認識、把握できるようになることが期待できます。
グループ3社で業務を標準化しようとするとき、小さいようだけど障壁になるのが「ことば、用語のちがい」です。言葉がちがうと、同じことを指していても、それになかなか気づけない。たとえば、半製品・製造仕様書といった一般的な用語であっても、それが指し示す対象範囲が異なっていたり、それ以上に各社独自のローカル用語も多々あります。
特に食品事故の際の緊急対応のときは言葉の統一が重要で、こんな小さなことで対応を遅らせてはいけない。今回のシステム統合を通じ、緊急対応の妨げとなる「言葉のちがい」を極力、取り除いていきます。
MerQuriusが3社個別に導入されている場合、保守費用が三重にかかります。従来は保守費用が3社合計で年間、数千万円に及んでいました。
システム統合後はこれが大幅に抑えられます。このコスト削減効果も今回のシステム統合の大きな成果となります。
「JT加工食品グループの品質保証体制をさらに強化します」
長谷川 達也 氏
JFEシステムズはテーブルマーク、ひいてはJTグループ加工食品事業にとっての「業務標準化パートナー」といえるでしょう。
今のJFEシステムズは「標準化」を軸に製品、サービスを展開しています。その「標準テンプレート」は多くの大手食品企業での運用経験に基づいて提案されるものであり、それに合わせて自社の業務を再構築すれば、業界標準の業務プロセスを導入できる、つまり業務の質と効率を高位平準化できます。
そして一度システムを標準化しておけば、将来の法令改正や業界環境の変化があった場合でも、JFEシステムズが製品にそれへの対応を反映したあと、その対応内容をただちに自社に導入できる。つまり変化に即応できる品質管理体制を実現できます。
テーブルマークは引き続き「食事をうれしく、食卓をたのしく。」というパーパスを実現すべく、食の安全・安心に着実に取り組んでいく所存です。JFEシステムズには、そうした弊社の取り組みを、優れた製品、サービス、提案を通じて継続支援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いいたします。
- お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。