【食の安心・安全コラム】
20年来のMerQuriusユーザーが語る
品質保証業務のあるべき姿とは?

品質保証業務はどうあるべきなのか。

食の安心・安全を担保する上で最重要となるこのテーマをJFEシステムズは20年以上にわたり、多くの食品メーカー様と一緒に考えてまいりました。

本コラムでは、長年MerQuriusをお使いいただいている大手食品メーカーの品質保証責任者様をアドバイザーとしてお迎えし、全9回にわたって、品質保証業務のあるべき姿を解説していただきました。

第3回:原料品質規格書編

掲載日:

ここがポイント

  • 品質情報管理の原点は「原料情報」の管理
  • 原料サプライヤーは原料品質規格書を提出する業務負荷が極めて高く、疲弊している
  • 原料品質規格書の統一書式によって、食品メーカー、原料サプライヤー双方がWin-Win

品質担保の肝となる「原料品質規格書」

JFEシステムズ(以下、JFE):前回のコラムでは、商品を中心とした品質情報の管理の重要性をお話しいただきましたが、様々な品質情報の内、まずはどの情報から管理を始めればよいのでしょうか?

アドバイザー

もちろん全ての情報が重要ですが、敢えて申し上げるとすれば、「原料情報」の管理から始めるべきだと考えます。なぜなら、食品メーカーの商品品質は、原料サプライヤーから受け取る、「原料品質規格書」で担保されている部分が非常に大きいからです。原料情報は、原材料表示、アレルギー表示、遺伝子組み換え表示、栄養成分表示、強調表示(特色ある原料)といった様々な表示項目の根拠となるだけでなく、自社製品の安全性、衛生性は、原料メーカーの工程管理の上に成り立っており、「原料情報」を正しく管理することが、品質情報管理の原点といっても過言ではありません。

原料サプライヤーは「疲弊」している

JFE:原料情報が重要である点がよく理解できました。この原料品質規格書を記入する原料サプライヤー側の状況について教えてください。

アドバイザー

原料品質規格書は、食品メーカーと原料サプライヤー間で取り交わされる契約書であり、食品メーカーの品質を担保する非常に重要な書類です。この書類は、原料の孫原料、ひ孫原料とそれに対応した、添加物、アレルゲンといった情報、工程情報、栄養成分情報等、数ページに渡り記載されており、法改正の度にこの書類を更新し、その履歴を管理する原料サプライヤーの負荷は非常に高く、まさに「疲弊」している状況であると言えます。

例えば、一つの原料を複数社に販売している場合、原料品質規格書は、提出する食品メーカーごとに書式が異なり、食品メーカーの数だけ書式が存在します。原料サプライヤーはこの様々な書式に情報を入力するだけでも大変です。それでも昔は、原料品質規格書の内容変更がほとんど発生せず、1度提出すれば終わり、ということも少なくありませんでした。

しかし現在は、毎年発生する法令改正、食品メーカーからも定期的な提出を求められることもあり、原料サプライヤーは頻繁に原料品質規格書を作り直さなければなりません。以下に対応の一例を記載してみました。

 

表1:原料サプライヤーAの原料品質規格書の提出履歴管理台帳

 

商品名提出書式1回目2回目
元情報作成日規格書提出日元情報作成日規格書提出日
チキンエキスXA社規格書2021.3月2021.4月2022.3月2022.4月
B社規格書2021.3月2021.5月2022.3月2022.8月
C社規格書2021.3月2021.6月2022.3月2022.6月
D社規格書2021.3月2021.6月2022.3月2022.6月

 

原料サプライヤーAのチキンエキスXは4社の食品メーカーに販売しており、それぞれの食品メーカーで書式が異なっています。今回、法令改正が発生したために、原料サプライヤーAは2回目の原料品質規格書の提出を行わなければならない状況です。そんな中で書式が複数あることによって、2つのミスが発生してしまいました。1つは、B社に対して提出が大幅に遅れてしまったこと、2つ目はC社への提出を行う規格書を古い情報を元にして作成してしまったことです。

いずれも、それぞれ書式が異なることによって発生し得るミスであり、提出先が増えれば増えるほど、これらのミスが発生する可能性は高くなります。原料品質規格書のミスは食品メーカーの製品表示にも影響が出てしまうため、間違いは許されません。こういった厳しい状況に原料サプライヤーは直面しています。

原料品質規格書の「共通化」

JFE:原料サプライヤーの対応負荷はこれからもますます増えていきそうですね・・・。どうにかならないのでしょうか。

アドバイザー

これらの問題は、原料サプライヤーだけでなく原料品質規格書を受け取る側の食品メーカーにとっても死活問題となります。この状況を解決するために、食品メーカー13社が集まり、各社の原料品質規格書を統一しようと考えました。ただし、原料品質規格書は自社製品の品質を保証する重要な書類であり、各社の思いが詰まっているため、完全に統一することは非常に難しい取り組みです。しかし、2年にわたって何度も議論を重ね、本当に必要な情報をまとめた「MerQurius Net原料品質規格書」が完成しました。

表示作成に必要な情報は共通項目として統一し、それ以外に各社で必要な情報を添付資料として、各社で自由に選択できる設計になっています。

このMerQurius Netにより、原料サプライヤーは異なる書式への記入ではなく、MerQurius Net書式の原料品質規格書を1度作成するだけで、様々な食品メーカーへの提出が可能となり、提出にかかる負荷は大幅に削減されています。原料サプライヤーの負荷が軽減されることは食品メーカーとしても正確かつ迅速に原料品質規格書の授受に繋がります。

現在では7,500社以上の原料サプライヤー、300社以上の食品メーカーが使用する書式であり、食品業界全体で最も利用されている原料品質規格書書式と言っても過言ではないかもしれません。

今回は、原料品質規格書授受の実態とMerQurius Netのご紹介をいたしました。次回のコラムでは、管理すべき原料情報の詳細についてお伝えしたいと思います。

本コラムアドバイザーの経歴

大手食品メーカーにて研究開発、品質保証責任者を歴任。長年に渡って、同社のMerQuriusの社内運用にご尽力をいただいており、今では同社の情報系の重要な中核システムとして全社でご活用を頂いております。2011年には、第1回食品表示検定・上級にも合格されており、現在は後進の育成にご尽力されています。

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