原料品質規格書は、食品メーカーと原料サプライヤー間で取り交わされる契約書であり、食品メーカーの品質を担保する非常に重要な書類です。この書類は、原料の孫原料、ひ孫原料とそれに対応した、添加物、アレルゲンといった情報、工程情報、栄養成分情報等、数ページに渡り記載されており、法改正の度にこの書類を更新し、その履歴を管理する原料サプライヤーの負荷は非常に高く、まさに「疲弊」している状況であると言えます。
例えば、一つの原料を複数社に販売している場合、原料品質規格書は、提出する食品メーカーごとに書式が異なり、食品メーカーの数だけ書式が存在します。原料サプライヤーはこの様々な書式に情報を入力するだけでも大変です。それでも昔は、原料品質規格書の内容変更がほとんど発生せず、1度提出すれば終わり、ということも少なくありませんでした。
しかし現在は、毎年発生する法令改正、食品メーカーからも定期的な提出を求められることもあり、原料サプライヤーは頻繁に原料品質規格書を作り直さなければなりません。以下に対応の一例を記載してみました。
表1:原料サプライヤーAの原料品質規格書の提出履歴管理台帳
商品名 | 提出書式 | 1回目 | 2回目 |
元情報作成日 | 規格書提出日 | 元情報作成日 | 規格書提出日 |
チキンエキスX | A社規格書 | 2021.3月 | 2021.4月 | 2022.3月 | 2022.4月 |
B社規格書 | 2021.3月 | 2021.5月 | 2022.3月 | 2022.8月 |
C社規格書 | 2021.3月 | 2021.6月 | 2022.3月 | 2022.6月 |
D社規格書 | 2021.3月 | 2021.6月 | 2022.3月 | 2022.6月 |
原料サプライヤーAのチキンエキスXは4社の食品メーカーに販売しており、それぞれの食品メーカーで書式が異なっています。今回、法令改正が発生したために、原料サプライヤーAは2回目の原料品質規格書の提出を行わなければならない状況です。そんな中で書式が複数あることによって、2つのミスが発生してしまいました。1つは、B社に対して提出が大幅に遅れてしまったこと、2つ目はC社への提出を行う規格書を古い情報を元にして作成してしまったことです。
いずれも、それぞれ書式が異なることによって発生し得るミスであり、提出先が増えれば増えるほど、これらのミスが発生する可能性は高くなります。原料品質規格書のミスは食品メーカーの製品表示にも影響が出てしまうため、間違いは許されません。こういった厳しい状況に原料サプライヤーは直面しています。